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ラブひな IF           〈白夜の降魔〉

 

 

 

弐の外灯・一幕 「思えば俺も若かった……」

 

 

 

 

時は深夜―――――陽光の下に生きる者が皆、眠りにつく時刻……

古めかしくも荘厳な洋館の一室にて、見目麗しい一人の女性が豪奢な寝台で眠りについていた……

その様はまるで眠り姫…長く美しい絹糸のような流れるような金髪に、整った容姿を持つ美女。

並の男では、彼女を汚すどころか触れることすら躊躇してしまいそうな…そんな清楚な雰囲気すらあった。

 

 

そして、そんな彼女を見つめる一対の瞳…その瞳は、窓の外から一心に彼女に注がれていた。

そう…ベランダと云った人が乗れそうな突起物が何一つもない窓の外に…だ。

彼女の部屋は三階…近くに木など無く、昇るための足がかりなど一切無いのに関わらず、

その瞳の持ち主は、窓の外から彼女を一心に…何かを愛でるかのように眺めていた。

 

 

時間にして数十秒…その人影かひとしきり彼女を見つめると、窓に手を当てた。

するとどうか、窓の鍵はまるで透明な手で操作されたかのように独りでに解除され、窓は音もなく開かれた!

 

―――――人影を自らを招き入れるかの如く。

 

そして音もなく部屋に入る人影…部屋に聞こえる音は、女性の寝息のみ。

その呼吸から、彼女は深い眠りについていることがわかる…

 

 

「目覚めるが良い。我が花嫁よ」

 

 

その呟くような甘い言葉に、眠っていた女性は緩慢な動きで起き上がる……

その女性の瞳からは理性の輝きが見られない…何も写してはいない……虚ろな瞳だ。

 

女性は寝台から降り立つと、微かに乱れた寝間着を直すこともせず、フラフラと人影に歩み寄る……

人影はそんな彼女を受け入れるかの如く、腕を振り、マントを大きく翻して女性をいだいた。

 

 

―――――次の瞬間!!

 

 

バァンッ!!

 

 

豪華な作りの扉が、壊れんばかりの勢いで開け放たれる!

そしてそこから部屋に入ってきたのは、二十台前半の彫りの深い顔立ちの青年。

手には猟銃を持ち、人影を見るや否や、その照準をピタリと合わせた!

 

 

「ジェニファーを放せ! 化け物!!」

 

 

青年の口から怒りと焦り…そして微かな恐怖が混じった叫びが上がる!

 

 

「ようこそ、我が花嫁の寝室へ…」

「ジェニファーを放せ!!」

 

 

それ以外の用件など無い! と云わんばかりに再度叫ぶ青年。

そんな青年の叫びに打ち払われるかの如く、夜空の雲が払われ、夜空にかかる満月が姿を現した。

 

その満月の光は開け放たれた窓から部屋の中を照らし、中にいる者達をあまねく照らす…

 

ジェニファーの、虚ろな瞳をしていても、些かも損なわれぬ美しさを…

青年の、焦りや恐怖、怒りが浮き彫りとなった表情と、絶え間なく流れる汗を……

そして、人影の整った容姿に病的とまで言える青白い肌…人有らざる尖った耳、鋭い犬歯と云った、

 

古くから謳われる、吸血鬼ヴァンパイアそのものの姿を!

 

 

「今宵は満月…今日ほど、我らが結ばれるに相応しき時はない」

「巫山戯るな!!」

 

 

自分に向かって構えられた銃など気にした様子もなく、吸血鬼は腕の中にいる女性の首筋に顔を近づける…

 

 

「香しき匂い…これだけで解る。我が花嫁の血はどんな美酒も素晴らしく、我を酔わせるだろう」

吸血鬼ヴァンパイアめっ!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

猟銃より放たれる弾丸! 狙いは真っ直ぐ吸血鬼の眉間にロックされている!

だがしかし、弾丸は吸血鬼に当たることなく、背後の壁を穿った!

 

 

「クソッ!!」

 

 

男は毒づきながらも手早く次弾を装填し発砲するが、

そのどれも初撃と同じく吸血鬼に当たることなく壁を穿ち、調度品を破壊する!

 

間違いなく吸血鬼の眉間、または身体の何処かにロックされているにも関わらずに―――――だ。

 

もし、弾道を見える者がいれば気がついただろう。

放たれた弾丸の軌道がどれも同じように、吸血鬼から一定の距離で変化していることに。

まるで、見えない膜の上を滑るかの如く、端にそれていることに!

 

 

「騒がしい蠅だ―――――少し静かにしてもらおうか」

 

 

吸血鬼の目が大きく開かれ、一瞬だけ赤く染まった次の瞬間!!

 

バキッ!

 

 

「―――――グァァッ!!」

 

 

嫌な音と共に青年の腕があらぬ方向に折れ曲がる!!

 

 

「ククク……そこで静かに見ていたまえ」

「や、やめろ…やめてくれ………」

 

 

恥も外聞もなく、涙を流しながら懇願するが、吸血鬼は意に介した様子もなくゆっくりと顎を広げる。

そして愉悦に顔を歪ませながら、長く伸びた犬歯を女性の首筋に突き立てた―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「きゃぁぁああああああっ!!」」

 

 

首筋に牙を立てられ、白目をむきながらビクビクと痙攣する女性を見て悲鳴を上げるしのぶとなる!

そして―――――

 

 

「喧しいッ!!」

 

 

そんな二人を上回るキツネの大声。

 

 

「たかがテレビ如きででかい声あげんなや!

しかも耳元で叫びよってからに…鼓膜が破れるかとおもうたわっ!」

 

 

耳を押さえながら怒鳴るキツネの剣幕に、なるとしのぶは恐縮したように縮こまり、頭を下げて謝った…

 

 

「ごめん…」

「すみません…」

「解ればいいんや、解ればな…しっかし、そんなに怖いか? その映画…」

 

 

なる達の隣で見ていたキツネ(酒・装備)は、理解できないと言わんばかりに眉を顰めていた。

 

 

そう…実はこれ、昨年の夏に放映された映画で、今はテレビで放映されている最中なのだ。

この映画、見た通り吸血鬼を元にしたホラー映画で、

あまりのリアリティ、迫力ある音楽、放送ギリギリの血の演出に恐怖を呼んだ一品。

 

それを見ていたなるとしのぶが悲鳴を上げたという訳なのだが…

放映は始まってまだ十数分。序の口でこれなのだから、先が思いやられてしまう……

 

 

「これのどこがそんなに怖いんや? 今までのホラーの方がよっぽど恐ろしいやろうに……」

「怖いですよ〜」

「そうよ。リアリティというか、なんか直接感じるというか…なんか生々しく感じない?」

「そうか〜? スゥは怖い思うか?」

「んにゃ?」

 

 

離れた所で機械を弄っていたスゥが、キツネ達の方に振り向き、首を捻った。

 

 

「ン〜…わからん」

 

「そ、そうなの…じゃぁスゥちゃん、想像してみてくれる?

もし、自分があんな奴に襲われるか、狙われることになったらどう思う?」

 

テレビを指差してそう言うなるに対し、スゥはニパッと笑い、

 

 

「そんときは、けーたろーに助けてもらえばいいやん」

 

 

事も無げにそう返事を返した。

その言葉になる達は数秒ほど怪訝な顔になった後、『あっ!』と言う表情で思い出していた。

 

 

「……そういえば、景太郎ってそっち系の専門家スペシャリストだったっけ?」

「そういやそうやったな」

「ええ…暫く何もなかったから忘れてました」

 

 

暫く前…素子と景太郎が闘った際に妖魔『餓鬼』を対峙した以来、そんな事はなかったのですっかり忘れていたのだ。(注・成瀬川は覚えていない)

では、鶴子と素子の異常な戦闘や、精霊種であるラブレスと会ったことはどうなのか? と聞かれれば、

鶴子云々は素子を普段から見ていたので、ある意味『見慣れた行為』だったし、

ラブレスにいたっても、その主たる灰谷のはっちゃけぶりにインパクトが薄かったのだ。

煉の除霊作業に関しては、キツネ達は途中退場なので除外だ。

 

もっとも、景太郎自身もあまりそう云ったことをひなた荘に持ち込まないようにしていた為、

なる達がそう云ったことに関わる機会がなかっただけなのだが…

 

なぜそうなのかというと、なる達の順応力が高すぎたのと、危険性を今一理解していないからだ。

興味の塊であるキツネの先導で、危険なところに突っ込みかねない…と、判断したのだ。

―――――その実例が煉の一件。

あの時、一般人でも怖じ気づくほどの強い妖気がなければ、間違いなく一緒について来たのは想像に難くない。

 

 

それはともかく―――――

 

 

 

「どうした? 凄い悲鳴と怒鳴り声が聞こえてきたけど…」

「外まではっきりと聞こえましたよ。何があったんですか?」

 

 

キツネ達が妙な納得をしている最中、素子を連れた景太郎がリビングに姿を現した。

 

鶴子との一件依頼、素子は景太郎に頼み込み、本格的な訓練に付き合ってもらっているのだ。

訓練中…それなりに集中している最中でも注意を引くほどの大声に、二人は気になって戻ってきたのだが…

皆の様子を見る限り、大したことは無さそうだ。

 

キツネもなんとなくそれを察したのか、少しだけすまなさそうに苦笑した。

 

 

「済まん済まん。なるとしのぶがホラー映画見て悲鳴上げただけや」

「怒鳴り声は? キツネさんだったようですけど…」

「なはははは…あんまりに喧しかったんでな。ちぃとばっかり怒鳴ってもうたんや」

「そうですか。何もないなら良いんですけどね…それで? どんなホラー映画なんですか?」

「今やっとるで」

 

 

テレビを指差すキツネに、そちらを見る景太郎。

テレビでは、身の丈ほどもある巨大な魔剣を操り、別の吸血鬼ヴァンパイアを殲滅している一人の青年の姿があった。

皆は知らないが、この後『吸血鬼狩りヴァンパイア・ハンター』の青年が先の吸血鬼ヴァンパイアを狩る依頼を受け、闘う…そんなストーリーだったりする。

 

 

―――――閑話休題それはさておき―――――

 

 

「これは?」

吸血鬼ヴァンパイアを元にした映画で、とっても怖いことで有名な作品なんです」

吸血鬼ヴァンパイア…ね。久しぶりに聞いたな」

 

 

しのぶの説明を聞き、感慨深げな顔になる景太郎。

そんな景太郎の後半の言葉を聞き、気になったしのぶが問いかける。

 

 

「神凪先輩。もしかして吸血鬼ヴァンパイアに会ったことがあるんですか?」

「あるよ。何度か相手にしたこともあるし。確か…最後に闘ったのは一年半ぐらい前だったかな?」

 

 

”退魔士”などという職業上、有名な妖魔(妖怪)と闘ったことぐらいはあるかな? と思っていたが、

こんなにあっさりと言われると、かの有名な『吸血鬼ヴァンパイア』も昔の知り合い程度にしか聞こえない。

 

 

「興味があるな…神凪。私は吸血鬼と闘ったことはおろか、見たこともないのだが…やはり強いのか?」

 

 

『無位』である素子は退魔の仕事に就くことが出来ず、知識としてしか吸血鬼ヴァンパイアを知らない。

故に、現物を知り闘ったことのある景太郎に興味を引かれたのだろう。

 

それは成瀬川達も一緒らしく、テレビそっちのけで景太郎に詰め寄った。

 

 

「面白そうね。私も聞いてみたいわ」

「確かにおもろそうやな。酒の肴になりそうやし」

「ウチも聞きたい〜」

 

「あの…私は……」

 

 

皆が話をせがむ中、しのぶだけが暗い顔ではっきりとしない。

怖い話になりそうだから聞きたくはない…でも、気になっている。

そんな典型的なジレンマにはまっているようだ。

 

 

「しのぶちゃん。怖いんだったら話はしないけど……」

「いえ、ぜひ聞かせてください」

「う〜ん…良いのかい?」

「はいっ!」

 

 

決意を秘めた目をするしのぶに、出来るだけ怖くないように話をしようと考える。

そもそも、怪談ではなく思い出話である以上、あまり怖くする必要もない。

 

 

「それじゃぁ話を…する前に、軽くおさらいしておこうか」

 

 

リビングの一角…一人用のソファーに景太郎が座ると共に、皆もそれぞれキチンと座り直す。

景太郎から見て、右手側にしのぶ、なる、キツネ。左手側に素子とスゥだ。

 

景太郎はこの中で唯一、自分に近い立場…素子に目を向ける。

 

 

「青山、お前は吸血鬼ヴァンパイアについてどれぐらいの知識がある?」

 

「私が知っているのは…あれらが『夜魔の貴族ミディアン』『命無き者の王ノーライフ・キング』『不死なる者ノスフェラトゥ』など、

数多の称号を冠する最強の屍者アンデットと呼ばれていること。

あと…奴等が”爵位”による階級分けされ、上に行けば行くほど強い…ぐらいだ」

 

「更に言えば、それ以前に『真祖』と『死徒』の二種類があり、”侯爵”位は真の『真祖』しかいないこと…

スタート地点は違うが、齢を重ねれば重ねるほどその力が強大になる…ぐらいだな」

 

 

真祖とは生まれた時より吸血鬼ヴァンパイアたる者。

死徒とは後々、何らかの方法を用いて吸血鬼ヴァンパイアとなった者。

一応、例外も有りはするのだが、それは本当に稀有だ。

 

そして、今の景太郎と素子の説明もほんのさわり程度でしかない。

吸血鬼ヴァンパイアと云う存在は千差万別と言っても良く、簡単には言い尽くせないほどの存在なのだ。

もはや『吸血鬼ヴァンパイア』と云う名は名称ではなく『種族』と言ってもいい。

 

 

「それで、神凪が闘ったことのある吸血鬼ヴァンパイアはどういった奴なんだ?」

 

「いろいろ…と言う程相手にしたわけじゃないが…

闘った中でも一番強くて面倒だったのは、四年前に闘った”伯爵”クラスの奴だな」

 

「”伯爵”だと? そんな大者が日本に来たのか!?」

 

「いや。その時は海外から来た依頼でな。俺が神凪の代表で出向いた。

かなりの富豪でな。貿易関係の仕事をしていたらしくて、それで神凪の噂を聞いたらしい。

それまでなら海外の依頼などは断っていたんだが…政府を通しての依頼だったしな。

それに、遠方専門の俺の手も空いていたし…強う断る理由がなかったんだ。

それとこれは身も蓋もないが…報酬もかなり良かったんだ。

俺の代わりに行く! と言い出す奴までいて、ちょっと揉めたほどだったな」

 

「ほう? 天下の神凪家が揉めるほどの報酬なんか? 一体幾らぐらいやったんや?」

 

 

金が絡むとえらく食いつきの良いキツネに苦笑しながら、景太郎は当時の報酬を思い出す。

四年前…それも(いろいろと)他の印象が強かったため、そう云ったことはあまり覚えていないのだ。

 

 

「確か…前金兼準備費用として五万ドル(約五百万円)、成功報酬として十万ドル(約一千万円)。

それと、吸血鬼ヴァンパイアにトドメを刺した者に百万ドル(約一億円)の特別報酬ボーナス……だったかな?」

 

「うわ、そらまたえらい太っ腹やな。そんなら誰が行くかで揉めてもしゃあないわ」

「キツネさん。あなた『酒の大安売り』なんてチラシに即つられ、不味い酒を大量に買うタイプじゃないですか?」

「う……」

 

 

身に憶えがあるのか、酒の入ったコップを持ったままピタッと静止するキツネ。

いろいろと思い当たることがあるのだろう。

 

 

「普段ならそれでも良いんでしょうけどね…『退魔士』なんてしていると、それじゃいけないんですよ。

報酬が危険度リスクの目安ですからね。高額報酬ほど高い危険リスクを負うんですから。

報酬の額が『命の値段』なんてままあることなんですから」

 

「さ、さよか……」

 

「その仕事も…それ相応に危険でこっちも命懸けだったんですから…本当にあの時は………」

 

 

昔を懐古しているのだろう、懐かしそうに微笑しながら景太郎はあの時のことを語り始めた………

 

 

 

 


 

 

 

 

「なんということだ! 世界でもトップクラスの炎術師の一族と聞いたから依頼したと言うのに!

それをこんな子供を寄越すとは…こちらを馬鹿にしているのにも程があるぞ!!」

 

 

イギリスのとある地方にある豪邸…その一室にて。

退魔の依頼を受けて訪れた景太郎を見た依頼主の開口一番の言葉がそれだった。

 

この頃、景太郎は十六才…体格の良い外国人から見れば景太郎はもっと年下に見える。

更に景太郎の童顔が、それをより一層助長させているのだろう。

依頼主は無表情で自分を見ている景太郎を、苛立たしげに睨んでいた。

 

 

「そちらがどう思うと結構…こちらも一行に構いません。

ただし、私は一族の宗主トップから勅命を受けてこちらに来ました。

一族の…宗主トップに恥をかかさないよう、それ相応の仕事をしてみせます」

 

 

景太郎の淡々とした言葉に、依頼主の男性…『ジョーンズ・アークエイル』は一旦怒りの矛先を納めた。

しかし、景太郎を見る目は変わらず忌々しげに…見下すように見ていた。

 

 

「さすが日本人。子供といえど口だけは達者だな。まぁいい、そこまで言うなら私はもう何も言わん。

だが、無様な仕事まねをして見ろ、即刻日本に叩き返してやる」

 

 

手元に置いてあった猟銃を構えると、その照準を景太郎の顔に合わせる。

もちろん、中には弾が篭められているのだろう。気迫もはったりとは思えないほど強い。

だが、当の景太郎は無表情のまま、とるに足らぬと言わんばかりに銃口をチラリ…と一瞥した。

 

 

「ふん…付いてきたまえ。君の事を紹介しよう」

 

 

その景太郎の度胸…もしくは態度に何かを感じたのか、ジョーンズはすぐに猟銃を下ろすと、

顎で景太郎に付いてこいと指図し、さっさと部屋から出ていってしまう。

そんな尊大な態度をとる依頼人に、景太郎は眉一つ動かすことなく、なんの感慨も浮かべず後を追った。

 

 

 

そして、ジョーンズの案内にて…景太郎は屋敷の二階、奥にある一室に通されると、

その部屋の中には六人の男女がおり、部屋に入ってきた景太郎とジョーンズの方を一斉に振り向いた。

 

気配から、一番奥にいる少女以外は同業者だと云うことが解る。

 

 

「お父様!」

 

 

一番奥に居た少女がジョーンズ氏に駆け寄り抱きつく。その言葉から、娘であることは間違いない。

ただ…母親似なのだろう、ジョーンズ氏とは似ておらず、深窓の令嬢と云う言葉がピッタリの美少女だ。

 

 

「おお、シャロン。良い子にしていたかい?」

「もう、お父様。子供扱いしないで下さい」

 

 

私、怒りますよ! と言わんばかりに頬を膨らませるシャロン嬢。

本人としては怒っているつもりなのかもしれないが、愛らしさしか感じさせない。

 

 

「それで、最後のお客様はおみえになられたのですか?」

「ああ、彼がそうだ」

「その子が…ですか!?」

 

 

信じられないと言う感じで景太郎を見るシャロン。

今年で十六となった彼女にも、景太郎は自分より年下…十三、四才ぐらいに感じていたのだ。

 

 

「彼は日本の精霊術師だ。今回の件に関して、政府つてを頼って依頼した組織から派遣された」

「こんな…私よりも年下の子がですか?」

「そうだ」

 

 

苦虫を噛み潰した後、なんとか平静を保とうとすればこうなるのだろう。そんな顔をするジョーンズ。

娘の言葉に先程まで下火となっていた怒りの炎が再燃したのだろう。

無表情で愛娘と挨拶を交わす景太郎に、忌々しそうな視線を遠慮無く送っていた。

 

 

「ジョーンズさん。そろそろ始めてくれませんかね。どうもジッとしているのは性に合わなくて……」

 

 

五人の同業者らしき者達の内、一番がたいの良い大男がどうでもよさげに話しかける。

そんな態度に一瞬、不機嫌そうな顔をするジョーンズだが、すぐに元に戻し、淡々と喋り始めた。

 

 

「まず、自己紹介から始めてもらおうか。そうだな…まず、君からだ」

「神凪 景太郎。炎術師。日本から来ました」

 

 

抑揚のない、必要なパーツのみを切り取って張り付けた様な挨拶をする景太郎。

普通なら馬鹿にされたのかと思うところだろうが、

この場にいる同業者は景太郎が見知らぬ地だから不安で、虚勢を張ってるのだと黙殺。

同じくシャロン嬢も、景太郎が無理して虚勢を張っているのではないかと、心配そうな目を向けていた。

 

だが…同業者の中に、景太郎の言葉に過敏に反応を示した者がいた。

 

 

「ほう…君があの神凪家の……」

 

 

歳は三十代中頃、高価なスーツを着た金髪の紳士風の男がそう呟きながら、景太郎を軽く凝視する。

値踏みするような無遠慮な視線に、景太郎は冷めた視線を返す。

 

 

「失礼。これは不作法だった、許して欲しい。

私は栄えあるマクドナルド家の一員、マクシミリアン・マクドナルドだ。無論、マクドナルドの事は知っているね?」

 

 

景太郎の視線で自分の非礼に気がついたのか、軽く謝罪するが、

後の自己紹介の後に付けた余計な言葉と、視線に混じる挑むような意志に、いまいち誠意が伝わらない。

初めからあるのかどうかも怪しいが…それでも景太郎は表情一つ変えず、言葉を返した。

 

 

「マクドナルド家…アメリカに存在する炎術師のトップにして名門。

特に『精霊獣』に関しては他の追随を許さぬ技術を有している」

 

「おお、よく解っているではないか!」

 

 

景太郎の言葉を聞いた途端、マクシミリアンは上機嫌となった。

景太郎としては、ただ単に知識を並べただけだが、彼にとってはそれで十分だったらしい。

 

 

「日本の術師は『精霊獣』を弱者の技だと嘲笑っているそうだが、君はそうでは無さそうだね」

「『精霊獣』は自らの攻撃力を上げるのに有用な手の一つと認識しています」

 

「そうかそうか。うむ、気に入ったぞ。もし、君が精霊獣を持つ気があるのなら言いたまえ。

マクドナルドの技術は教えられないが、基本的なレクチャーを私自らがしてあげよう」

 

「その時にはお願いします……」

 

 

背中を強く叩きながら友好の意を示すマクシミリアンに、景太郎は差し障りのない返事をする。

今はそのつもりはないが…そう云った技術を得る機会をむざむざと捨てる必要はない…と、判断したからだ。

 

 

「仲良きことは美しきかな…良いことですね」

 

 

傍目には仲良くなったと思われる景太郎達に、神父が胸の前で十字をきりながら語りかけてきた。

歳は二十代前半、絹糸のような金髪を首筋辺りで切りそろえ、女性的な顔立ちをしている。

 

 

「どうも。私は教会より派遣された、神父の『ピエトロ・クライスマン』といいます。お見知りおきを……」

 

 

ピエトロと名乗った女顔の神父は、景太郎に向かってそっと右手をさしだした。

景太郎は聞き手を出すことに一瞬逡巡したが、結局その手を握り返した。

なんのことはない…聞き手を封じられていたとしても、然したる問題はないと判断したからだ。

 

そんな景太郎の考えなど伝わることなく、ピエトロは、

 

「神よ、新しき友人との出会いに感謝を致します」

 

と、胸元で両手を組み、神に祈りを捧げた。

しかし、祈る神など持たぬ景太郎は、それを無視してピエトロに話しかける。

 

 

「神父…と云うことは、カトリックですね。公式ですか?」

「ええ。恥ずかしながら…末席ですが、キチンとした公式『悪魔祓いエクソシスト』です」

「その若さで…」

「ええ。特例として実績を少々免除されまして。そのおかげで風当たりが強いんですけどね」

 

 

ははは…と、苦笑いを浮かべる神父。

カトリックの公式悪魔祓いエクソシストになるには、主要八ヶ国語の会得、人格において厳しい審査、

十年以上の実績、高い霊力と霊格など最低条件ほか、様々な厳しい条件をクリアした者のみ認められるのだ。

それほどの地位ゆえに、公式の者は間違いなく『一流』の退魔士なのだ。

 

 

「それと、私のことは気軽に『ピート』と呼んで下さい。景太郎君」

「ええ……」

 

 

ニッコリと綺麗な顔で微笑むピートに、無表情で頷き返す景太郎。

微妙にずれた光景というか…対照的な二人だ。

 

そんなピート達に向かい、最初に声を上げた大男が景太郎達を揶揄の声をかける。

 

 

「餓鬼と神父は気楽で良いねぇ。これからここは戦場になるって言うのに」

「やめなよ、グリニデ」

「そうだぜ兄貴。弱っちぃ奴等はああでもしないと不安で仕方がないんだからさ」

 

 

残りの二人…男女が大男の言葉をフォローしているのかよく解らない言葉で静止する。

そんな二人の言葉に大男は軽く肩をすくめ、やれやれと言いながら頭を掻いた。

 

 

「はは、それは手厳しいですね。それよりも、皆さんも自己紹介をお願いします。

戦場となる此処で共に闘う…いわば戦友になるのですからね」

 

 

しかし、あからさまな侮辱にもピートは顔色を変えず(本当に出来た人だ)、

景太郎に向けた笑顔をそのまま三人に向けながら声をかけた。

 

 

「お偉い神父さんにはかなわねぇな…よし、じゃぁ俺からだ。

俺の名前は『グリニデ』。ファミリーネームはとうの昔に捨てたんでな、そう呼んでくれ」

 

 

先にも述べたが、顔に一筋の傷を持つ筋骨隆々の大男が『グリニデ』と名乗る。

その筋肉は見せかけではなく、『戦闘用』に鍛えられていることはこの場の誰が見ても解る。

 

 

「あたしは『エルザ』。どうせ長いつき合いになるわけじゃないからこれで良いでしょ」

「俺は『トム』。せいぜい足手まといにならないようにしてくれよ」

 

 

グリニデの言葉をフォロー? した二人組が続いて名乗る。

エルザは赤髪の美女。ただし、受ける印象は女豹。下手に手を出せば噛み付かれるだけではすむまい。

そしてトムは長身だが貧相な男。失礼な言い方かもしれないが『こそ泥』と云うのが似合っている感じだ。

 

 

「俺達三人でチームを組んでいる。名は『破邪銀の杭ミスリル・パイル』。一応、それなりに知られたハンターなんだぜ」

「知りません」

「―――――ッ! このくそ餓鬼!!」

 

 

景太郎の絶妙なつっこみ(本人にその意思無し)にグリニデではなく、トムが怒気も露わに睨み付ける!

 

 

「フッ…所詮、術者でもなんでもない君達はその程度だと言うことだよ。

有名なハンターらしいが、足手まといになるのは君達の方ではないのかな?」

 

「あんだと手前テメェッ!!」

 

 

かなり憤慨していたのだろう、マクシミリアンがここぞばかりに鼻で笑いながら侮蔑すると、

グリニデとエルザは軽く一笑して聞き流したが、トムは懐に手を入れながら立ち上がる!

何が入っているかは解らないが、どう考えても殺傷道具であることだけは間違いあるまい。

それに対し、マクシミリアンもいつでも術が起動できるよう火の精霊を召喚する!

 

 

―――――が、

 

 

「そこまでにしてもらおうか」

 

 

と云う言葉に二人の動きが止まった。

横槍を入れたのはジョーンズ…依頼主である以上、その言葉を蔑ろにするわけには行かない。

少なくとも、二人はその事を理解するほどには理性もあり、大人であった。

 

 

「お互い”誇り”があり、譲れないものがあることは重々解った。だが、今は止めてもらおう。

どうしてもというのであれば、仕事が終了した後で幾らでもやってくれ」

 

 

その言葉に、二人は(渋々ながらも)臨戦態勢を解いた。

それを見たジョーンズは一回頷くと、景太郎を含めその場の全員に席に座るように勧めた。

 

 

「さて…では本題に入ろうか。

約一月前…娘、シャロンの寝室にある鏡に、血文字のようなメッセージが突如描かれた。

内容は、『次の満月の夜、午前零時にシャロンを花嫁として貰い受ける』と云うあまりにも馬鹿げたことだ。

その時は、つまらぬ悪戯だと一笑した…が後で気になり、知り合いの霊能力者に見てもらったところ、

その文字から強い魔力を感じ、本物だという事が解った。

相手は言うまでもなく吸血鬼ヴァンパイアだ。それもかなり強力な…な」

 

 

事の顛末を説明した後、ジョーンズは事の重大さを理解したか? と言った感じで景太郎達全員を見回す。

隣のシャロンは気丈に振る舞っているつもりだろうが、顔色の悪さは隠せない。

 

 

「それで、君達にしてもらいたいことは大きく分けて二つだ。

一つは言うまでもなく、今夜来訪するであろう吸血鬼ヴァンパイアを退治すること。

二つ目は、それが敵わぬ場合、最低でもこのシャロンを護り抜くことだ」

 

「チィッとばかり俺達のことを舐めてませんかね、ジョーンズさん。

そのお嬢さんを護るまでもねぇ。その前に巨大蚊トンボを叩き潰せばいいだけだ」

 

「それは心強い。是非ともその通りにして欲しいものだ」

 

 

グリニデの言葉に期待しているというような返事をするジョーンズだが、

表情は『口だけでないことを期待しているよ』と言わんばかりだった。

 

 

「奴が来るのは今夜の零時…それまで、この部屋で好きに過ごすと良い。食事も用意させよう。

ただし、つまらぬ諍いで関係を悪化させないようにな。

下らぬ足の引っ張り合いで失敗する愚か者ではないと思うが…念のためにな」

 

 

それだけ言うと、ジョーンズは娘を連れて部屋を去った。

その間際、君達には期待している…と、言い残して……

 

 

「期待している…ね。ありがたい言葉だ」

 

 

部屋から遠ざかる足音を確認しながら、薄ら笑いを浮かべてそう呟くグリニデ。

どこまで本気なのやら…笑みは雄弁にそう語っていた。

 

 

 

そして―――――

 

それから間もなく、数人のメイドが豪勢な夕食を運び、テーブルに奥と部屋を去った。

バイキング形式であるから、自分で取って食べろ…と言うことなのだろう。

 

皆は思い思いの場所に座ると、それぞれ小皿に盛りつけて食事を始めた。

 

予想に反して意外とうまい食事に、皆の心はゆるみ、先程まであった硬い雰囲気が徐々にだが霧散される。

ジョーンズもそれを狙っていたのかは解らないが、どちらにせよ良い傾向であることには間違いない。

 

ただ……

 

 

「しっかりと食っとけよ坊主共。これが最後の晩餐かもしれねぇからな」

 

 

と言うグリニデの余計な一言がなければ…だ。

この言葉に、仲間であるエルザは渋い顔をし、トムは逆にケラケラ笑うが、

ピートはなんとも言いがたい顔を…景太郎とマクシミリアンは完璧に無視を決め込んだ。

 

 

「なんだよ、つっこみは無しかよ。つまんねぇな〜……

『そんな事を言う奴が一番先に死ぬんじゃないのか?』とか言えよ。

おら坊主。若いお前が一番ノリが悪くてどうする。それに日本人はノリとツッコミが命なんだろうが」

 

「それは一部の人達です」

 

 

とりあえずツッコミを強要するグリニデに、一応つっこんでやる景太郎。

外見とは裏腹に、気さくで陽気な人物らしい。

先の仲間の反応は、どうやらグリニデの悪い癖が始まったと感じての事みたいだ。

 

 

「グリニデさんの愉快なジョークは良いとして…景太郎君。

一つ聞きたいんだけど、君は退魔士としてどれぐらいの経験を積んでいるのかな?

もし、吸血鬼ヴァンパイアと闘った経験が無いのであれば、レクチャーしても良いけど?」

 

 

子供である景太郎を心配しての言葉なのだろう、ピートが親切に訪ねてくる。

彼の目から見ても景太郎は十二分に子供。

退魔士としての経験など皆無であろうし、相手は吸血鬼ヴァンパイア…下級妖魔などとは比べモノにならない存在だ。

多種多様な能力を有し、ちょっとやそっとでは死ぬことのないもっとも不死に近い生物。

一筋縄どころか、二筋も三筋でも足りないほど厄介な相手だ。

 

 

「とは言っても、私も人に言えるほど闘ったわけではないんですけど…」

「何匹ですか?」

「え? 私が個人で倒したことがあるのは三匹です。共同作業であれば十匹ぐらいですけど…」

「俺も個人で三匹ほどを始末したことがあります」

「そ、そうなのかい? その若さで三匹も倒したことがあるなんて…」

 

 

目の前の少年を侮り過ぎていたことに気がつくピート。

個人のスコアーでなら自分と少年は同格。年齢を考えれば景太郎の方が凄いと言えるだろう。

 

 

「ふふん、私は五匹だ。もちろん、個人でな」

「そうですか。マクシミリアンさんも凄いですね。さすがです」

 

「何がさすがなもんか。三匹や五匹で偉そうに」

 

 

トムの横槍にマクシミリアンの眉がピクンと跳ね上がる。

表面上は平静を装っているが、少しずつ増えている火の精霊がその内情を雄弁に語っていた。

 

 

「ほほぅ…では、貴様達の戦績は一体どれくらいなのかな?」

「さてね…俺はいちいち数えてねぇからな。一体どれぐらいだっけ? 姐さん」

「この間ので丁度三十だよ」

「有象無象も合わせて…な」

「あ、兄貴! それは言わなくても……」

 

「ふふん。貴様の兄貴分は良く理解しているではないか。虚勢を張っても仕方はないことに……」

 

「ついでに言えば、無象はともかく有象の中には三百年ものもいたけどな」

「ぬ……」

 

 

基本的に吸血鬼ヴァンパイアと云う存在は生きるほど強くなり、大体『百年』単位でおおよその強さが測れる。

そして、三百年は(吸血鬼ヴァンパイアの中で)そこそこ強い部類に入り、多少腕が立つ程度の術者では敵わない。

もし倒せれば…訂正、倒すほどの実力があれば、文句無しに世界レベルの一流と言えるだろう。

ついでに言えば、マクシミリアンが倒した吸血鬼ヴァンパイアは百年あまりだけだ。

 

 

「あの時は苦労したぜ。依頼人に騙されて、ろくな装備も無しに挑んだんだからな。

しかも、こっちが用意した武器のほとんどが効かねぇし……姐さんのユニ―――――」

 

「トム…手の内をベラベラと明かすのは三流のすることだよ」

 

 

自慢げに話すトムを遮るエルザ。

トムは不満げな顔をするが、エルザの眼光にすごすごと下がった。

 

 

「それにしても…三百年ですか。さぞかし苦労したことでしょうね」

「まぁな。だが、奴等には決定的な弱点があってな。そこをつけば勝機はある」

「へぇ! それはなんですか!?」

 

 

グリニデの言う『明確な弱点』に強く興味を引かれるピート。

これから強力な吸血鬼ヴァンパイアと闘う事になるのだ。勝率を上げる弱点を知っておくことに越したことはない。

 

 

「それは教えられ「”油断”ですよ」―――――坊主ッ!」

「奴等は人を見下している。その油断が決定的な隙を…決定的な好機チャンスを作る」

「………よく知ってるじゃねぇか。坊主もその手で倒したのか?」

「ええ。前口上を長々と述べている隙に燃やしました」

「ほう? 吸血鬼ヴァンパイアを一撃で倒すたぁやるじゃねぇか。三匹ともそれで倒しやったのか?」

「ええ」

「ハッ! 雑魚を不意打ちで倒した程度でいい気になるなよ」

「そうですね」

 

 

グリニデに誉められた景太郎が気にくわないのか、因縁を付けてくるトム。

そんなトムに景太郎は短く返事した後、ソファーに座って目を瞑った。

 

 

「この餓鬼っ!」

「止めろ」

 

 

そのすかした態度が感に触ったトムは表情を怒りに染めて立ち上がるが、隣のグリニデに止められる。

 

 

「子供相手にいきり立つな。みっともない…」

「………解ったよ」

「嫌だね、男ってヤツは変にプライドに拘るんだから」

「あ、姐さん……」

「坊やの方がよっぽど落ち着いてるじゃないか。これじゃどっちがベテランだか判りゃしないわよ」

「冗談は止してくれ。こんなヒヨッコと一緒にされちゃ困るぜ」

「ヒヨッコね…坊や、あんたはこの仕事について何年になるんだい?」

「………四年…ですね」

「四年って…あんた歳は幾つだい?」

「十六です」

「十六!? あたしはてっきり……」

 

 

と、そこで口を閉じるエルザ。失礼だと感じたのだろう。

そこはかとなく、一体何歳と思ったのか訊いてみたい気がしたが…とりあえず、黙殺した。

 

 

「四年か…炎術一本で渡ってきたのかい?」

 

 

その言葉には、七割の興味と三割の探りが含まれていた。

景太郎の戦法、実力を見切ろうとしているのだろう。

戦場で景太郎の動きをある程度予測できるよう…そして利用し、最終的には出し抜けるように…と。

その事は景太郎も理解しているのだろう、

 

 

「他にも少々嗜む程度に…どんな状況にも対応できるように鍛えています」

 

 

と、曖昧に答えて悟らせないようにした。

 

この後も、エルザ以外にもいろいろな質問をぶつけられたが、それら全てを曖昧に答えた。

時折、逆に答えにくい質問を返して矛先を逸らしたりして、

自らの実力はもちろん、神凪の内情などを一切悟らせる様なことはしなかった。

 

 

 

そして…日は落ち、代わりに真円を描く月が昇り―――――闇の眷属の時間となった。

 

 

 

 

 

―――――二幕へ―――――

 

 

 

 

 

―――――あとがき―――――

 

どうも、ケインです。

そんなこんなで、久方ぶりの外灯です。

神凪家の方々の出番はありません。期待していた方達、本当に申し訳ありません。

なにせ、元が吸血鬼ヴァンパイアもののアニメを見て、吸血鬼ヴァンパイア相手のを一本書いてみたい! と、弟が考えたのが最初ですからね。

仮の題名も『ヴァンパイアハンター・K』でしたし…まんまというつっこみは勘弁です。

 

さて…この外灯の本筋は、吸血鬼ヴァンパイアを倒すまでの話ですので、そこそこ長くなる予定です。

話の展開は、景太郎の昔語りの間に、成瀬川達への説明などが入る…みたいな感じです。

あれはどういった意味なのか、どういうものなのか? ですね。

同時に、いらないつっこみもあったり無かったり……

 

 

それでは、次回…二幕『真夜中の来訪者』を、よろしければ読んでやってください。

 

ケインでした……

 

 

―――――追記―――――

ピートの素性、身分を訂正。御指摘いただいた方々、どうもありがとうございました。

 

 

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