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「その思い上がりが命取りだ」

 

 

 

その言葉が聞こえるや否や、トラックに跳ねられたかのように吹き飛び、地面に激突する吸血鬼ヴァンパイア

そして、シャロン嬢を抱えながら大地に降り立つ景太郎。

 

吸血鬼ヴァンパイア念動力サイコキネシスを使った一瞬の隙に間合いをつめ、殴り飛ばし、シャロンを奪い返したのだ。

 

 

『おおおぉぉぉ……』

 

 

そんな景太郎の凄まじい早業に、ハンター達は感嘆の歓声を上げる―――――が、

 

 

 

『あぁぁっ!!?!』

 

 

 

それは絶叫に変わる! よりにもよって、景太郎がシャロンを地面に叩きつけたのだ!

屋敷の方から「シャローン!!」というジョーンズ氏の絶叫が聞こえるが、

景太郎はかまわずシャロン嬢を踏みつけ、忌々しげに舌打ちした。

 

 

「やってくれる……」

「け、景太郎君なにを―――――」

 

 

 

マクシミリアンが景太郎の行為を非難しようとした直後、シャロンが何十匹ものコウモリとなって分散する!

景太郎はシャロンに擬態したコウモリをつかまされたのだ。

 

 

「どうかね? 束の間の勝利は」

「最低な気分だ」

 

 

いつの間に移動したのか、馬車の屋根の上に優雅に立っている吸血鬼ヴァンパイア

その腕には、顔がよく見えるように抱えられたシャロン嬢の姿があった。

だが、本人は優雅に決めているつもりだろうが、マントが半分以上無くなっているためいまいちしまらない恰好だ。

本人もそれが解っているのだろう、不愉快な顔でマントを何度も振る。

 

(再生できぬ? それどころか炭化が広がっているだと?)

 

徐々に広がる炭化に、にわかには信じられないと言う顔になる吸血鬼ヴァンパイア

通常であれば、一瞬で再生してしまうはずのマントが、戻るどころか徐々に炭化しているのだ。

 

 

「ならば……」

 

 

意を決したように炭化している部分を大きく千切る。そして改めてマントを振るうと、瞬時にして元に戻る。

地に落ちた切れ端はそのまま炭化が進み、灰となり、風に吹かれて散っていった……

 

 

「ふむ…ただの炎ではないな。何か力を加えているのかね?」

「教えてやる。直接、お前の身体でな……」

「フッ…フハハハハ! 面白い、実に面白い人間モータルだ。名はなんという?」

「相手に名を尋ねるときは、まず自分から…それが紳士の礼儀じゃないのか、伯爵閣下」

 

『なっ!?!』

 

 

その瞬間―――――周囲の者達が凍りついたように硬直した。

尋常ならざる相手だとは思っていたが、それがまさか『伯爵』位の吸血鬼ヴァンパイアだとは思ってもなかったのだろう。

爵位…上から『公・侯・伯・子・男』となり、伯爵は丁度真ん中だが…それは爵位での真ん中。

吸血鬼ヴァンパイアの中では強い方であり、三百年当たりの連中とは桁…いや、格が違う。

 

 

「この私が『伯爵』と知っていて闘うとは…その勇気と度胸、そして人間モータルにしては高い実力。実に気に入った。

私はマルキオ。マルキオ・メルキオーネだ。近年、伯爵位を授かったばかりの新参者だ」

 

 

それはつまり、自分は伯爵の中でも下の方だと言いたいのか、それとも他に意味があるのか…

それは解らないが、はっきりとしているのはマルキオと名乗る吸血鬼ヴァンパイアが伯爵級の実力であることだ。

先程までは、景太郎を舐めていたから隙があったのだが…これから先はそれも難しいだろう。

少なくとも、注意が完全に景太郎に向いている現状では……

 

 

「神凪……景太郎」

「私はマクシミリアン・マクドナルドだ!!」

 

「貴様には聞いていない。分を弁えろ〈虫けら〉」

 

 

明らかな侮蔑の言葉にマクシミアンは怒りに我を忘れそうになるが、理性でなんとか抑えつけた。

相手は強大なのだ。怒りで炎の精霊は強くなるかもしれないが、それだけで勝てるほど甘い相手ではない。

マクシミリアンもプロだ。それが理解できないほど馬鹿ではない。

 

 

「カンナギ・ケイタロウか……」

 

 

脳裏に沁み入らせるかのように目を瞑り、景太郎の名前を吟味するように復唱するマルキオ。

そして、暫くしてから開かれたその眼は、鮮血の如く紅くなり、月夜の闇に怪しく輝く。

 

 

「気に入った。君を我が居城に招こうではないか」

 

 

その瞬間、そこそこ離れた場所の高台に突如、巨大な城が出現する!

唐突に、そして悠然と…優雅さと禍々しさを兼ね備えた城が現れた。

 

 

「せっかくの招待だが…遠慮する」

 

 

轟ッ!!

 

景太郎を中心に白銀ぎんの炎が発生する!!

その炎は景太郎にじゃれつくようにまとわりつき、余波だけで周囲の魔気を破壊する!

 

 

「貴様は……今ここで消滅す!」

 

 

強い殺気を叩きつける炎術師、神凪 景太郎。

それを強烈で禍々しい魔気で迎え撃つ伯爵級吸血鬼ヴァンパイア、マルキオ・メルキオーネ。

 

爆発寸前の炸裂弾のような危険な緊張感が二人の間に漂う!

 

 

「やはりただの炎ではないようだな…だが、良いのか?

そのままそれを放てば、娘ごと焼き尽くしてしまうぞ」

 

「それも仕方がないだろう。彼女が堕ちる前に殺してやるのが人としての慈悲だ」

 

「フッ…つくづく人間モータルと云う存在は傲慢だな。自分達を至高の存在と勘違いしている。

だが…私は君が気に入った。是非とも城に招きたい。そこで一つ、ゲームをしようではないか。

明日の日没、あの場に再び城が現れる。夜明けまでに君が私を倒せば、彼女は返そう。

無論、それまで彼女には手を出さない。だが、失敗した場合は…言わずとも解るね?

どうかな? 良い余興だと私は思うのだが…」

 

「断る」

 

 

交渉の余地など欠片もないと言わんばかりの速攻の返事。

 

 

「どうしてだね?」

「その必要すらない。さっきも言った。貴様はここで殺す!」

 

 

その時―――――一発の銃声と共に、景太郎の足下の大地が小さく弾けた!

 

 

「止めろ、貴様は娘を殺す気か! チャンスだ、奴の言うとおりにしろ!!」

 

 

二階の窓から猟銃を構えながら叫ぶジョーンズ氏。その銃口の先にあるのは景太郎。

そう、先程の銃撃もジョーンズ氏のものだ。

先程は牽制なのだろう、今はその照準を景太郎の頭にピッタリと合わせている。

 

 

「フフ…依頼主もそう言っている。ゲームは成立かな?」

「(馬鹿が)………いいだろう。今回は依頼主の顔を立てて退く。だが、次は―――――殺す!」

 

「良い返事だ。期待しているよ、カンナギ少年。

君が四つの苦難を乗り越えて、我が元に辿り着くことを願っている」

 

 

その言葉の終わりと同時にマルキオが消えると、馬車がUターンして城へと向かった。

空間転移で馬車の中に入り、見せつけるように堂々と帰るつもりなのだろう。

 

馬車は重々しく開かれた城門より中へと入っていった。

そしてそれと入れ替わりに、城の中から凄まじい数の妖魔が溢れ出し、

それら全てを吐き出した城門は再び閉まり、現れた時と同じく忽然と消え去った。

 

後に残ったのは夥しい数の妖魔―――――その数、最初の約三倍以上!

妖魔達は城が消えると同時に屋敷に向かって怒濤のように押し寄せ始めた!!

 

 

「奴め、とんでもない置き土産を!!」

 

 

マクシミリアンは押し寄せる妖魔を見て舌打ちすると、再び守護精獣ガーディアン・フレイアを作り、掃討に向かわせる。

生き残ったハンター達も一箇所に固まって妖魔と戦うが、

あまりにも多勢に無勢すぎ、倒すどころか身を護るので精一杯だ。

 

 

「悪い坊主。言い訳はしねぇ、文句は掃除が終わってから聞く」

 

 

扉を蹴破るように出てきたグリニデは景太郎にそう言うと、奇妙な大剣らしきものを構え、妖魔の群に突入した!

そのすぐ後を、不満げな顔をしたトムと無表情のエルザがグリニデに続いて妖魔に掃討を始める。

 

 

「景太郎君……君は良くやったよ」

 

 

グリニデ達に遅れ、屋敷から出てきたピートが、無言で立ちつくす景太郎に優しく話しかける。

シャロンは護れなかったとは云え、伯爵級の吸血鬼ヴァンパイアと対等以上に渡り合い、退かせたのだ。

そもそも、シャロンを護れなかった責は、すぐ側にいた自分達にこそある。

そう、言外にピートは言っているのだ。

 

だが…その言葉の返事は―――――振り上げられた拳だった!

 

 

「クソがっ!!」

「―――――ッ!!」

 

 

ドゴンッ!!

 

振り下ろされた拳は大地に叩きつけられ、小さなクレーターを作り出す!

ピートはその際の衝撃に吹き飛ばされた後、人間の力を超えた現象を目の当たりにして絶句する。

とてもじゃないが、小柄な…自分よりも体格が小さい景太郎が行ったとは思えない。

 

 

「け、景太郎君! 怒るのは解りますけど落ち着いて下さい!」

「………………」

 

 

歯を食いしばり、拳を強く握りしめる景太郎。確かに彼は怒っていた。

目の前でおめおめと取り逃がしてしまった吸血鬼ヴァンパイア、そして邪魔をした依頼人ジョーンズに。

だが、それよりなにより、伯爵級の吸血鬼ヴァンパイアを侮っていた愚かな自分に対して怒っていた。

 

 

「くそったれが……」

 

 

口汚く罵る…それは主に自分に対しての罵り。

吸血鬼ヴァンパイアの油断をつくつもりが、自らが傲り隙を作っていては馬鹿としか言い様がない。

 

 

「景太郎君、怒りは後にとっておいて下さい。明日の闘いのために…

今はあの妖魔をなんとかすることを考えましょう。このままでは明日になる前に全滅してしまいます」

 

「………」

 

 

グリニデ達やマクシミリアンが素晴らしい早さで妖魔を駆逐しているが、それでもまだ数は多い。

やっと四分の一程度を倒せたかぐらいだ。まだその数は裕に二百を上回っている。

 

 

「おい坊主ども! ボサッと立ってないで手伝え!!」

「グリニデさんもそう言っていることですし……景太郎君!?」

 

 

黙って右腕を振り上げる景太郎。

同時に身に纏っていた炎が爆発的に膨張し、ピートは思わず後ろに下がった!

 

 

「失せろ!!」

 

 

振り上げられた腕が横薙ぎに振るわれた刹那、炎が妖魔達に向かって放たれる!

その炎はまるで巨大な高波ビック・ウェーブの如く、妖魔達を瞬く間に飲み込んだ! グリニデ達諸共!!

 

 

「な、なにを考えているんだ景太郎君!?! ハンター達諸共焼き尽くすなんて!」

 

 

離れた場所から守護精獣ガーディアンを操っていたため、炎の波にのまれなかったマクシミリアンが景太郎を行為を非難する!

同じ炎術師だから解る。今の炎の凄まじさと、それが巻き起こす結果を。

あの熱量からして妖魔は全て駆逐されただろう。

同時に、グリニデ達やハンターの連中は骨どころか灰のすら残らず消滅したであろうことも……

 

隣にいるピートも、景太郎の炎が秘める膨大なエネルギーを感じたのか、真っ青になって何も言えない。

マクシミリアンも一緒なのだが…それよりも、景太郎の行いへの義憤が高かったようだ。

 

 

「なんていう…酷いことを………」

 

 

やっとの事でそれだけの言葉を紡ぐピート。

しかし景太郎は微塵にも気にせず、何かを払いのけるように腕を振った。すると―――――

 

 

「あ、あれ?」

 

 

あれだけあった炎が幻のように消え去り、後には呆然と立ちつくしたグリニデ達と、

半分は同じく立ちつくし、残りは腰が抜けて座り込んでいるハンター達の姿が現れた。

 

妖魔の姿はどこにもない…ついでに言えば、何かが燃えたりした痕跡も無かった。

 

 

「対象を…限定しただと? こんな少年が…あれ程の規模で?」

 

 

庭全体を覆いつくす炎…それは妖魔のみを”焼く”事に限定された炎。

それを理解した瞬間、マクシミリアンは全身に恐怖による鳥肌が立っていたことを自覚した。

この若さで自分よりも遙かに高い技術を有し、凄まじい数の精霊を従えている少年に対し…心から恐怖した。

 

 

「これからどうするのか…集まって話し合いましょう」

 

 

景太郎はマクシミリアンを含む皆にそう言うと、踵を返して屋敷の中に入っていった。

グリニデ達は暫しの間動けなかったが、すぐに思い出したかのように動き、景太郎の後を追う。

景太郎の言うとおり、これからの対策と方針を決めるため、依頼人を含めて皆と話し合おうと……

 

 

 

 

 


 

 

 

「さて…話し合う前に、一つ聞きたいことがある」

 

 

とある一室…先にいた部屋とは別の部屋にて、皆がそろった時の一声がそれだった。

発言者はジョーンズ氏。険しいという言葉が優しく感じるほど強く景太郎を睨んでいた。

 

 

「神凪君。君は一体どういうつもりなのかね? 吸血鬼ヴァンパイアをむやみに挑発するなんて…

もし、あのまま戦ってシャロンに何かあったらどうするつもりだったのかね?」

 

「何かさせるつもりは無かった」

「なかっただと!? 巫山戯るのも大概にしろ!」

 

「巫山戯ているのはそっちだ。さっきも特等席二階から見ていただろうが。

俺は燃やせる対象を限定できる。あのまま戦っても貴女の娘を燃やすことは無かった。

仮に、あの吸血鬼ヴァンパイアが娘に手をかかけようとしても、邪魔をすることは十分できた」

 

 

景太郎も邪魔をされて腹が立っていたのだろう。依頼主であるジョーンズに対して睨み返している。

だがそれが逆に感に触ったのだろう、ジョーンズは顔を真っ赤にして景太郎に詰め寄った!

 

 

「ではなぜさっさと吸血鬼ヴァンパイアを倒そうとしなかった!!

君がさっさと吸血鬼ヴァンパイアを倒していれば、こんな事にはならなかったんだぞ! ―――――ウッ!」

 

 

いきり立って景太郎の首元をつかもうとしたジョーンズだが、その手前で景太郎がその手をつかんで止めた。

そしてそのまま手首を強く握りしめられて、逆にジョーンズが苦悶の声を上げる。

 

 

「いい加減にしろ。誰の所為だと思っている……」

 

 

抑えているものの、怒気を含んだ低い声音にジョーンズはハッと身体を強張らせる。

今、自分が掴もうとしていたのは裏の世界の人間。

見た目が自分よりも小さかろうが、その気になれば触れるまでもなく消滅させる事ができる存在なのだ。

 

今更ながらその事に気がついたジョーンズは、身近に感じた死の恐怖に身体を小さく震わせる。

 

 

「あの時、奴を挑発したのは逃がさないためだ。真正面から戦えば、余計な荷物シャロンを抱えたままじゃ不利になる。

そうなれば、奴は一時的にも娘さんを放すしかない。仮に放さなくても、そのまま戦って倒せば良かったんだ。

だが、それもジョーンズさん…あんたの横槍の所為で失敗した」

 

「な―――――なら、なぜ事前にそうなるかもしれないと教えなかった!

君が燃やせるものを限定できるなど、私は全く聞いてはなかったぞ!」

 

 

今度は逆切れ…自分の所為で娘がさらわれたなど信じたくないのだろう。

その事を責められたくないため、全ての責任を景太郎に擦り付けたいのだ。

 

だが…それをみすみす甘受するほど景太郎は寛容ではない。

 

 

「教える前に…打ち合わせをせずにさっさと部屋から出て、来たと思ったら外に追い出したのは貴男だ」

 

「景太郎君の言うとおりだ。貴男が全てを話していればこんな事にはならなかった。

私と景太郎君を追い出して籠城することも…あの吸血鬼ヴァンパイアが伯爵だということもね」

 

「クッ―――――だ、黙れ黙れ!! 私は大金を払って貴様等を雇ったのだぞ!

だったらそれ相応の仕事をしてから文句を言え!」

 

「ジョ、ジョーンズさん。少し落ち着いて下さい」

「五月蠅い! 役立たずのクソ坊主は黙っていろ!!」

 

 

ピシッ―――――ピートの表情が困った感じがする笑顔のまま凍りつく。

が、すぐに朗らかな笑顔になると、やんわりとジョーンズの手を掴んでいる景太郎の手を外させた。

そしてジョーンズを自分と真正面に向かい合わせると、彼の両肩に手を置いた。

 

 

『クソは手前テメェだ、このクソ親父。誰が”役立たず”だと? それもこれも手前テメェ責任せいだろうが。

俺達がなんとかしようとしたら、手前テメェが下手くそな銃を乱射するからなにもできなかったんだよ。

挙げ句の果てになんとかしようとした彼を邪魔して、その責任は全て俺達にあるだと?

あんまり巫山戯た事ぬかしてたら、手前テメェの○○○をぶち切って×××の穴にねじ込むぞ』

 

 

おそらく、10人中8人は落とされかねない素敵な笑顔でとんでもないことをぬかすピート。

良識人なら面前で口にするが憚られるようなことをつらつらと並べてジョーンズを罵倒している。

とてもじゃないが聖職者の台詞だとは思えない。

特に(一応)青少年である景太郎の前では…情操教育に多大な影響がありかねない。すでに手遅れだろうが…

 

ともかく、そんな暴言を吐きかけられたジョーンズは顔を真っ赤にして更に怒る!

 

 

 

 

―――――かと思いきや……

 

 

「何を言っているのかね?」

 

 

怪訝そうな顔でピートに問い返した。

実は今の言葉、ジョーンズには理解できない国の言葉…日本語で喋っていたのだ。

今の今まで英語で会話していたのに、いきなり日本語である。

つまり、ジョーンズには解らないように罵ったと云うことで……彼の本性が垣間見えた瞬間と言えよう。

どうやら、公式悪霊祓いエクソシストになるための免除は、実績だけではないらしい……

 

どうでもいいが、もしジョーンズが日本語が堪能だったらどうしていたのか気になるところだ。

 

 

「おっと済みません。思わす故郷の言葉で喋ってしまいました。今のは…

『ジョーンズさん、貴方の愛する御息女はきっと大丈夫です。だから祈って下さい。

さすれば、神の深い慈悲と愛がシャロンさんを護ってくれるでしょう』―――――そう言ったのです」

 

「そうかね? 先程の言葉に私や娘の名前はなかったような『ジョーンズさん!!』な、何かね!?」

「それは気のせいです」

「いや、気のせいではないような―――――」

 

「貴方は御息女がさらわれたせいで気が動転しているんです!

だから私の言葉がちゃんと聞こえなかったのです! そうに違いありません!!」

 

「そ、そうかね…」

 

 

にこやかな笑顔ながらも鬼気迫ると云う言葉がピッタリのピートの顔に、ジョーンズは思わず頷いた。

彼もピートの威圧感を感じ、これ以上云々とつっこむのは危険だと本能で察したのだろう。

 

 

「それよりも…ジョーンズさん」

「何かね?」

 

「色々と黙っていたことを追求したいが…とりあえず不問にしておくよ。

あんたの危惧したとおり、馬鹿正直に相手が伯爵だなんて言ったら、誰も相手にしてくれないからな」

 

「………」

 

 

グリニデの的を射た言葉になにも言い返せないジョーンズ。

だが、グリニデが言ったのはあくまでジョーンズの考え。

もし実際にジョーンズがちゃんと報せていれば…魔術師ギルドなどの組織レベルが動いたかもしれない。

その場合は、町の一つや二つが消え去る可能性があるが……それは余談だ。

 

 

「それはさておき、確認したいんだが…依頼内容の吸血鬼ヴァンパイアを退治することとお嬢さんの護衛。

それは引き続きで良いんだな。もっとも、後者は護衛と言うよりも救出になるが……」

 

「ああ、その通りだ。必ず娘を無事救い出して貰う。それが最優先だ。

見事吸血鬼ヴァンパイアを討ち取った者には報酬に百万ドル上乗せしよう。

それとはっきりと言うが、私は君達の命よりも娘の方が大切だ。

もし失敗したら…それ相応の責任は取ってもらう。覚悟したまえ!」

 

 

それだけ言うと、ジョーンズは激情を抑えるように歯を食いしばって部屋を出ていった。

あのままではそう遠くないうちに心労で倒れるだろうが…ここにいる連中は誰一人として心配などしていない。

 

 

「俺達の命よりも娘の方が大切ね。はっきり言ってくれていっそ清々しいな。

みんなの命は平等だとか、頑張ってくれとか口だけで言うよりも好感がもてらぁ」

 

 

さも面白いという感じでジョーンズが出ていった扉を眺めるグリニデ。

エルザとトムも、グリニデのそんな言葉に苦笑を浮かべて同意していた。

 

 

「でも、それで逆上するのも時と場合を選んで欲しいのが本音ですけどね…

あ、そうそう景太郎君。くれぐれもさっきの言葉は他の人達に訳さないでくださいね」

 

「残念ながら、エルザさんと話していたので聞いてなかったんです」

「そう言ってくれると嬉しいです」

 

 

景太郎の心遣いに感謝するピート。そしてエルザも…

 

 

「私も残念ながらね。神父様の心暖まるお言葉を聞き逃したよ」

 

 

”流暢な日本語”で同意した。

 

 

「え〜っと…エルザさん?」

「聞いてないよ。ただ、なんとなく神父に貸しが出来た気はするけどね」

「はい……」

 

 

失敗しまずったと云う顔のピートに、エルザが艶然と微笑みながら更に日本語で語りかける。

 

 

「神父に貸しを作るなんて貴重な体験ね。子々孫々と言い伝えたい気分だわ」

「は…ははは……それは勘弁してください」

 

 

引きつった顔で笑いながら、低い腰でお願いするピートに、嬉しそうな笑みになるエルザ。

繰り返すが、それはもう本当に嬉しそうだ。

 

 

「ところでさ、神父さん。あんたの故郷って本当に日本?」

「心の故郷ふるさとです」

 

 

しれっとそう言うピート。つくづく見た目に反した内面だ。

その反動で、神父という道を歩んだのかもしれないな…と、景太郎はなんとなく思った。

 

一方……

 

 

「姉御、さっきから何を楽しそうに話してんだよ」

 

 

トムとグリニデは日本語が解らないらしく、不思議そうな顔をしている。

雰囲気から何か面白そうな話だという事は解るが、言葉が解らない以上さっぱり…仲間外れだ。

 

そんなトム達に、気にしなくて良いよ。こっちの話だから…と、曖昧な笑みと共にエルザが英語で返事を返した。

 

 

「さて…馬鹿話はそこまでだ。これからの対策を考えよう」

 

 

雑談はここまで…と、今まで会話に加わらなかったマクシミリアンが場を取り仕切る。

しかし、口調からすると、彼もまた日本語が解るようだ……が、それは置いとくとしよう。

 

 

「相談するまでもねぇ。今夜また城が現れたら、乗り込んで奴をぶっ殺す!」

 

「それは解っている。だが、なんの準備も無し、考え無しに乗り込んでどうする。

罠があれば、それこそ一網打尽にされるぞ。少しは色々と対処を考えるべきだ」

 

 

グリニデの考えのない言葉に、渋い顔をして反論するマクシミリアン。

行動派と慎重派…両極端な本質の二人ゆえに、二人の意見が合うことはなかなか無いだろう。

 

 

「怖けりゃ来なくてもいいんだぜ。お偉い術者様は屋敷の隅で震えてりゃいい。

その間に、俺達が全部片づけてやるからよ。ケケケケケ………」

 

 

小馬鹿にしたような笑いをするトム。

そんなトムを、マクシミリアンは鼻で笑いながら見下した目で見る。

 

 

「ハンターと云う存在は脳だけではなく教養も足りないようだ。まったくもって不愉快極まりない。

もう一度小学校からやり直すのだな。そうすれば文明人の仲間になれるかもしれんぞ。

もっとも、足りない脳味噌ではやるだけ無駄かもしれないがな」

 

「あんだとこら! ファーストフードみたいな安直な苗字してる奴に言われたくねぇんだよ!!」

「貴様! 栄えある我らの名を侮辱するか!!」

「嫌ならとっとと改名しちまえよ。『ロッテ○ア』なんて良いんじゃねぇの? 字数も減って断然お得だぜ」

 

 

馬鹿笑いするトムに憤怒の形相になるマクシミリアン!

そのマクシミリアンの怒りに反応して炎の精霊が勝手に集まる!

力の高まりを察したのか、トムも表情を一変させ、真剣な顔で腰の小剣の柄を握る!

 

 

「殺すッ!」

「やってみな、お得意の火遊びでな!」

「上等だっ! 灰も残さず消滅させる!!」

「できるのならな!!」

 

 

マクシミリアンの意志を受け、炎の精霊がいつ具現化してもおかしくないほど高ぶる!

対し、トムは腰の両脇に差している二本の小剣の柄を握ったまま、半眼となって気配を鋭くする!

 

マクシミリアンが右手を挙げ、トムが腰を落として重心を下げた―――――次の瞬間!!

 

 

「止めろ、トム」

「―――――ッ! いくら兄貴でもそれは…」

「無駄なことで”眼”を使うな」

「でも…」

「俺の言うことが聞けねぇのか」

「うっ……わかったよ」

 

 

言葉と言うよりも、グリニデの眼光に説得されたトムは、渋々ながら小剣から手を放した。

 

 

好機チャンス!!)

 

 

自分から注意の逸れたトムに向かい、マクシミリアンは炎術を発動させる!

 

―――――はずだったが、

 

 

「炎術が起動しない!? いや、これは……」

 

 

術の起動云々以前に、彼の呼びかけに炎の精霊がまったく応じない。

それどころか、自分に感応して高ぶっていたはずの精霊が穏やかになってすらいた。

その様なことは自然になるはずもなく…唯一、考えられる原因であろう人物にマクシミリアンは視線を向けた。

 

 

「景太郎君。これは一体何のマネかね?」

 

「一々言わなくてはいけませんか? 俺達の仕事はあの吸血鬼ヴァンパイアの滅殺。

今は同業者同士の殺し合いをしている時じゃありません。なにせ相手は”伯爵”位なんですからね。

そんな相手の居城に乗り込むんです。人手は…強い人手は一人でも多い方がいいんです」

 

 

景太郎の静かな視線に頭が冷えたのか、マクシミリアンは咳払いをしつつソファーに座り直した。

確かに、景太郎の言うことはもっともなのだから……それを認められないほど、彼は未熟では無かった。

 

 

「坊主の言うとおりだ。子供でも解ることを、いい大人が忘れてんじゃねぇぞ」

「解ったよ……」

 

 

グリニデに言われ、トムもソファーに座り直す…が、

マクシミリアンと目が合い、両者ともフン! と鼻息荒くそっぽを向いた。

これではどちらが子供だかわからない。

 

 

「それでは、最終確認をしたいと思います」

 

 

マクシミリアンに代わり、今度はピートが進行役となった。

三人組とマクシミリアンはぶつかるので除外。

景太郎は無愛想に座っているため論外。だから彼しか残っていないのが本当だったりする。

 

 

「我々の目的は『吸血鬼ヴァンパイアの退治』並びに『シャロン嬢を無事に救出する』の二つです。

その為、今晩現れるであろう吸血鬼ヴァンパイアの居城に乗り込みます。そこまでは良いですね?」

 

 

確認するように皆を見回すが、今更異論をはさむ者はいない。

それを見て頷いたピートは、説明を続ける。

 

 

「こちらの理想としては、一気に攻め入ってボスヴァンパイアを潰し、シャロン嬢を保護する…です。

が、わざわざ招かれる以上、罠は当然あってしかるべきでしょう。

景太郎君の話によると、あちらが『四つの苦難』と言っていましたし…

その為に各自、必要だと考えられる準備をしてください。それで良いですか?」

 

 

ピートはグリニデ達、マクシミリアンを見るが、反論は無いようだ。

次に景太郎を見るが、彼も小さく頷いて肯定の意を示した。

 

 

「俺もそれで良いと思います。どんな罠があるか解らない以上、自分の判断で準備をするべきです。

付け加えるのであれば、今日の襲撃方法と相手の性格を考慮して考え、

俺は主に戦闘準備が必要だと思いますけどね」

 

「なるほど…確かにそれも一理ありますね。解りました。私も参考にさせてもらいます。

それでは…皆さん、各自準備を…そして、夕方に屋敷の前で落ち合いましょう。では……」

 

 

ピートのその言葉を最後に、それぞれは席を立ち、準備をするために行動を開始する。

 

作戦はまとまった。もっとも、作戦と言うにはおこがましく、あまりにもずさんであったが……

皆もそれは解りつつ、今はやれることをするために行動を開始した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「もしもし……」

 

 

屋敷の一角。無意味に豪華な備え付けの電話を借り、電話をしていた。

その相手は…悪友の一人、魔工技創師エンチャンター見習いの白井だ。

 

 

「おう、景太郎か。もう仕事は終わったのか?」

「いや、まだだ」

「なに、まだなのか? やっぱ”伯爵”位の吸血鬼ヴァンパイア相手はお前でもあっさりとはいかないようだな」

「ああ。せっかく事前に灰谷から聞いていたのにな…」

「正確には、母親のつてで調べたんだけどな」

「それはどちらでもいい。結果的には俺の判断ミスだ。奴を少々甘く見すぎていた」

「お前の口からそんな言葉が聞けるとはな。明日の日本の天気は大荒れだな」

「勝手に傘でも持って歩いてろ。それよりも、〈心操器〉の調整はまだなのか?」

 

「いや、もう終わった。今さっき教授プロフェッサーが俺のところに送ってきたところだ。

これで完璧にお前の精神と同調するはずだって言付けと一緒にな」

 

「それは良かった。すぐに持って来てくれ」

「あぁ!? 馬鹿言ってんじゃないぞ! なんだってイギリスまで俺が行かなくちゃならないんだよ」

 

「それと例の苦無を一式…後、殲滅戦用の装備。符を作るための紙と墨もだ。

手持ちの符だけじゃ不安だからこっちで作る。六時間以内で準備をして持ってきてくれ」

 

「俺の意見無視!? 無茶苦茶言うなよ、準備だけで精一杯だぞ」

「頼んだぞ」

「頼んだぞ。じゃねぇ! そもそもお前、六時間以内にそっちに行けるはずねぇだろうが!」

「クリスティア家を経由すれば可能だろうが」

「お、お前なぜそれを知ってるんだ!?」

「灰谷に聞いた」

「あの野郎! 勝手に調べた上に友達の情報を売るか!?」

「百万も取られた」

本気マジで売ったのか!」

「そう言うことだ。頼んだぞ」

「いや、無茶だって…クリスティア家が私事で”転移門ゲート”を使わせてくれるはずねぇだろ」

「お前なら可能だろう? そこの一人娘の婚約者であるお前ならな」

「あ、あれは爺さん達の勝手な取り決めだ。それにそれも私事だろうが」

「クリスティア家には、お前の婚約者リュミスさんを通じて頼んでおく」

 

「いや、ちょっと待て!! リュミスに頼むのだけは止めてくれ。

あいつに頼んだら後で何を請求させるかわからん。

この前だって、久しぶりに会ったら睨まれてドツキまわされた後、パシらされたんだぞ」

 

「それは”久しぶり”と付くまで会わなかったお前が悪い」

「俺が悪いのか!? 会う度に半殺しの目にあっているんだぞ、逃げたくなってもおかしくはない!」

「その態度が余計にリュミスさんを怒らせているんだよ……」

「訳わかんねぇよ。そもそもあいつは俺のことを嫌ってるんだぞ?」

 

(その時点で間違ってるんだがな…教えても良いが、口止めされてるし……)

 

「お前は何が気に入らないんだ? 家柄は良い、家族の公認、本人は可愛く美人。どこに不満がある」

「不満だらけだ! 年下だし…」

「たった四つだろうが」

「いつも殴ってくるし…」

「それはお前がいつも怒らせるからだ」

「性格が高慢ちきだし…」

「良いじゃないか。それぐらい…お前と一緒になって丁度釣り合うぐらいだ」

「お前な! さっきから俺の意見を否定しまくりやがって! 所詮他人事だからそんな事が言えるんだよ」

「そうかもな。でも、第三者の視点だからこそ気付くこともあるんだ」

「訳が解んねぇよ」

「とにかく、準備は頼んだ。六時間後にクリスティアの別荘に取りに行くからな」

「おい、景太郎! 俺は了承した覚えは―――――」

 

 

言葉を最後まで聞かず、受話器を置く景太郎。

そしてすぐに持ち上げると、クリスティア家の電話番号を記憶の中から探してかけ始める。

 

 

 

「―――――はい。当家になんの御用でしょうか、神凪 景太郎様」

 

 

繋がった直後に、うら若き女性の声…以前に聞いたことがあるクリスティア家のメイド長の声が聞こえた。

こちらは何も言っていない、電話も他人の…しかもアナログ電話だ。

それなのに、名乗る前にこちらが誰か判っているような口振り…いや、実際に判っているのだろう。

何らかの方法…おそらくは魔術付与エンチャントされた電話で、こちらが誰か判るのだろう。

 

先に名を告げられて一瞬驚いたが、すぐに冷静になる。

相手は魔工技創師エンチャンターの名門中の名門『クリスティア』家。この程度で驚いていてはキリがない。

もしかすると、相手はこちらが見えている可能性もあるのだ。迂闊な姿は見せられない。

 

 

「済みません、シェリルさんに取り次ぎをお願いします」

「お嬢様にどのような御用件でしょうか」

 

 

すぐには取り次がず、用件を問い返してくる。メイド長の分を超えた対応だが、それも致し方ないだろう。

あちらは千年以上続く名家。海外の裏世界では神凪を楽に超える権力を有している。

日夜、有象無象が何らかの手を使ってコネを作ろうとしているのだ。

たとえ次期当主である一人娘の婚約者、その友人といえど警戒するのが当然だ。

むしろ、問答無用で電話を切られない程度には信頼があると考えられる方なのだ。

 

 

「……”転移門ゲート”を使わせてもらおうと思いまして」

「済みませんが、その様な御用件は、組織の上部を通し、然るべき手続きをとった上で申し込みください」

「神凪の者としてではなく、俺個人としての頼みです」

「……………解りました。リュミス様にお取り次ぎいたします」

「済みません」

「いえ…」

 

 

景太郎の軽い謝罪に短く応えた後、受話器からベートーベンの『第九』風の軽いメロディが流れる。

その音楽を聴きながら、確かこの前は『トロイメライ』だったな…と思い出す景太郎。

ちなみに更にその前は『モルダウ』だったことから、ランダムか順番でもあるのか? と思いつつ、

次辺りは『ワルキューレ騎行曲』かもしれないな…などと予想をしていた。

 

 

―――――そんな時、

 

 

「もしもし、代わったわ」

 

 

受話器の中から可愛らしい声が聞こえた。

名門『クリスティア』の一人娘で、白井の婚約者『リュミス・クリスティア』だ。

 

 

「久しぶりです」

「ええ、久しぶりね。前にあったのは半年前だったかしら?」

「リュミスさんが白井の家に来たときですから…そうなりますね」

「そう。それで、”転移門ゲート”の使用許可が欲しいそうね。理由を聞かせてもらいましょうか」

 

「こっち…イギリスで伯爵位の吸血鬼ヴァンパイアと戦う事になりまして。

ちょっと出し抜かれてしまい、奴の居城に乗り込む事になったんです。

それで、白井に俺の装備を届けてもらおうと思ったんです。それで……」

 

「”転移門ゲート”を使わせて欲しいのね。つまり、使うのは貴方じゃなくて功明きみあきってこと?」

「そうです。許可は頂けますか?」

 

「許可するしないの以前に、功明きみあきは認識登録されているからいつでも使えるはずよ。

功明きみあきに聞かなかったの?」

 

「本人は『幾ら俺でも私事には使えない』と言ってましたけど?」

 

「そう…だからまったくこっちに来ないのね……週に一度は来いって言ったのに……

この前キチンと教えたと思ったんだけど…教え足りなかったようね……」

 

 

ミシミシ……

 

受話器越しに何かが軋む音が聞こえる。何か…と云うのは十中八九、向こう側の受話器だ。

確か、材質はプラスチックでも高度は鋼以上になるように魔力付与エンチャントされていたはずなのだが……

 

景太郎は心の中で白井へ黙祷を捧げた後、できる限り優しい声で話しかける。

 

 

「リュミスさん。申し訳ないけど”教える”のは帰りにしてください。それなら幾らでもかまいませんから」

「ええ、わかっているわ。ついでに、学校に功明きみあきが暫く休むって伝えてくれると嬉しいわね」

「わかりました。できる限り穏便にお願いします。婚約者が留年したなんて恥ずかしいでしょう?」

「それもそうね…できる限り手加減をするわ」

「そうしてください。では……」

「ええ。死ぬんじゃないわよ。あんたが死んだら功明きみあきが悲しむんだからね」

「はい。ああ、それと…その気持ちを白井に素直に向けると良いですよ。きっと上手くいきますから」

「う、うるさい! 余計なお世話よっ!!」

 

 

 

ガチャンッ!!

 

耳を貫くような大声と共に電話が切れた。

きっと今頃、向こうでは顔を真っ赤にしたリュミスが荒い息を吐いていることだろう。

 

 

「本当に意地っ張りな子だ。本当は優しいのに…白井の前だとあがってあんな態度になるんだからな」

 

 

週に一度は来い…それは、自分が会いに行くのは恥ずかしいから白井から会いに来いと言っているのだ。

まったく顔を見せなくても、自分から会いに行かず…ひたすらじっと待っている。かなりいじらしい子なのだ。

 

 

(白井。早く気付いてやれよ。あんな良い子は滅多にいないんだからな)

 

 

景太郎は微苦笑と共に受話器と戻すと、仮眠を取るために用意された一室に向かった。

 

 

 

 

外では…ようやく太陽が姿を現そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

―――――第三幕へ続く―――――

 

 

 

 

………あとがき………

 

どうも、ケインです。

あっれ〜…おかしいですね。予定だったらこの時点で吸血鬼ヴァンパイアを倒してお終いのはずだったんですけど…

ちょこっと吸血鬼ヴァンパイアが強かったのと、景太郎が侮りすぎていたようです。

正確には、景太郎は相手の手の内を見極めてから…と、考えていたんですが、

実際に見極めていざ反撃と云うところで、依頼主に邪魔されたんです。

もし、あのまま戦闘を続ければ八割以上の確率で景太郎が勝っていました。

 

それがなんとまぁ…私の予想を超えてジョーンズ氏が動いちゃって。

このままだと、六幕か七幕ぐらいまで引くかもしれませんね……うわ、長い……

 

 

それはそうと、神父のピート君。

感想をくださった人に『神父はカトリック、それ以外は牧師』と云う指摘を頂きました。

それで、ピート君を公式の悪魔祓いエクソシストと云う設定にしました。

本当にあるかどうかは知りません。(多分、無いでしょうけど……)

彼の元ネタは、とある漫画の神父でして…そのまま神父で、書いてあった公式悪魔祓いエクソシストを使いました。

一幕の方も訂正しておきましたので……

(そのとある漫画とは、題名の一部に東京の地名が書かれてあるヤツです。弟が好きなもんで……)

 

 

 

それでは、次回は景太郎達が吸血鬼ヴァンパイアの城に乗り込みます。

あっさりと倒すか、それともRPG風に手強いか…私が書くとおそらく後者になりますが…

せっかくハンター達がいるんですから、活躍もさせてやりたいし……

 

長くなってしまいますが、よろしければ読んでやってください。

 

 

それでは、ケインでした………

 

 

 

 

 

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