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―――――時は少し遡り―――――

 

 

ピートと別れた景太郎は、グリニデ達の戦っている所を迂回し、黄金の甲冑のいる地点へ近づいていた。

無論、白銀の甲冑達が見逃すはずも無く、剣や槍を繰り出すが、

その全てを流れる動きで避けつつ、甲冑達の間を風のようにすり抜け、すぐに目的の前に辿り着いた。

 

 

「………お望みどおり来てやったぞ」

「…………」

 

 

黄金の甲冑に向かって話しかける景太郎。

だが、黄金の甲冑は黙したまま…もっとも、喋れるかどうか不明だが…ジッと景太郎を見た後、右手を軽く挙げた。

それと同時に、十体の白銀の甲冑が景太郎を囲み、手に持つランスの切っ先を突き付ける!

他の連中と違い、この十体の甲冑達の動きは統一されており、隙がない。

 

 

(微かに動きが人間くさい…訓練された動きだ。やはり……)

 

 

ある確信を抱きつつ、氣の結界を張る景太郎。

これで半径十メートルの空間は完全に把握した。風の流れさえはっきりと解る。

 

 

そして…黄金の甲冑は『かかれ!』と云わんばかりに手を下ろし、銀色の甲冑が景太郎に向かって突進する!

 

八方位同時攻撃―――――残る二体が上空に跳び上がり、獲物に襲いかかる鷹の如く襲いかかる!!

逃げ道は…そう考えた時点で、景太郎は鼻で笑った。

 

八方位、上空同時攻撃―――――逃げ道は一見無い。

しかし、やろうと思えば一角を突破し、同時攻撃を崩すことはできる。

 

だが…

 

(この程度の攻撃で『逃げ道』を考えているようでは、『涅槃ヤツ』を倒す事など夢のまた夢だ!!)

「逃げることなど不要―――――立ち塞がる敵邪魔するやつは全て薙ぎ倒す!! 五霊戦術・凶断まがだち!!」

 

 

景太郎の手…否、身体より放たれた神氣の波動が白銀の甲冑を弾き飛ばす!

弾き飛ばされた甲冑はそれぞれのパーツに分解、バラバラとなって床一面に散乱する……

 

元に戻る様子はない。それは当然だ。

その神氣の波動は甲冑を浄化…取り憑かされていた『魂』との回路を断ち切ったのだ。

構成物質が何かは知らないが、今は普通の甲冑となったのだ。

 

それが解ったのだろう。

黄金の甲冑は散らばった甲冑を見回し(正確には頭部を動かしたのだが、景太郎はそう感じた)た後、

腰に差してあった剣を引き抜くと両手で構え、切っ先を真っ直ぐ景太郎に向けた。

景太郎も手を軽く持ち上げ、右足を少し前に出した構えをとる。

 

 

「…………」

 

 

『剣道三倍段』―――――空手と剣道が互角に戦うためには、空手は剣道の段の三倍は必要との意。

それはつまり、剣を使う者相手に、徒手空拳は限りなく不利…三倍以上の実力差が必要だと言うことだ。

そんな言葉を知らずとも、通常考えれば無手が不利なことぐらいは見れば解る。

 

戦うことによって生計を立てているハンターなどなら尚更だ。

 

 

「坊主、武器はいるか?」

「ちょ、ちょっと兄貴、俺の剣を取らないでくれよ」

「うるせぇ、二本もあるんだから一本ぐらいいいだろうが」

「それならあんたのを貸してやりなよ」

「馬鹿。坊主が俺の剣を使えるはずねぇだろうが」

 

「申し出は感謝しますが結構です」

 

 

そちらにチラッと視線を移しながらグリニデの申し出を断る景太郎。

そして視線を戻すと―――――眼前に剣を振り上げた黄金の甲冑が居た!!

 

振り下ろされる白銀の剣! 景太郎は慌てることなく半歩横に動き、刃を避ける!

振り下ろされた刃は床を斬り、その衝撃が一直線に床を割る!!

それは甲冑の力量か、それともその剣の力なのか、そのどちらにせよまともに受ければ両断は間違いない。

 

しかし、景太郎はその事に眉一つ動かすことなく、一歩踏み込み間合いをつめて左手で掌打を繰り出す!

 

 

 

「終わりだ―――――凶断まがだち!!」

 

 

だが、その掌打は引き寄せられた剣の柄で受け止められる―――――が!

 

 

「―――――弐式にしき!」

 

 

掌底より放たれた氣弾が柄を透過し、黄金の甲冑に衝突―――――霧散する!!

 

 

「―――――ッ!」

 

 

『魔を断つ』氣弾が霧散したことに驚き、目を大きく見開く景太郎。

その一瞬をついて黄金の甲冑は剣を薙ぎ払うが、間一髪、景太郎は後ろに跳んで避ける。

 

 

(”魔”のみを断つはずの弐式が無効化キャンセルされた? いや、残滓が波紋の様に拡散した…弾かれたのか)

 

 

先程視えた氣弾の散り方に推測をたてる景太郎。

だがそれも束の間、黄金の甲冑が見た目とは反した素早い動きで景太郎との間合いをつめる!

 

 

「―――――破ッ!!」

 

 

今度は遠距離で『凶断まがだち・弐式』を放つが、氣弾は甲冑にあたる前に剣で両断、霧散される!

見た目が派手な儀礼用の剣だと思っていたがどうやら実用的かつ力を秘めた霊剣らしい。

ただし、並の霊剣なら『弐式』はすり抜けていたはず…どうやらかなり高いレベルの霊力を秘めているようだ。

 

更に―――――

 

 

「クッ!」

 

 

次々に振るわれる剣撃を避ける―――――その剣速は凄まじく速く、そして強い!

景太郎は紙一重で避け、間合いをつめようとするが、黄金の甲冑は同じ分だけ下がり間合いを変えない。

押しても引いても常に一定の剣の間合いを保つ…それのなんと難しきことか。

 

一歩…景太郎の間合い、手が届くたった一歩の距離が、景太郎には果てしなく遠い道のりにすら感じた。

 

 

(隙を作っても誘いに乗らず、常に一定の間合いで最速の剣を振るう。

正統剣術らしい地味で堅実な闘い方…極めればこれ程戦いにくいとは……)

 

 

服をはしばし斬られつつ、紙一重でひたすら剣を避ける。

だが……突如、黄金の甲冑は攻撃の手を止めた。

 

 

『………』

「………?」

 

 

訝しがる景太郎を余所に、黄金の甲冑は右手の方向に歩き…床に突き刺さっている剣を引き抜いた。

それはマクシミリアンの守護精獣ガーディアンが倒した甲冑が持っていた武器の一つだ。

黄金の甲冑が持ってる剣よりは数段劣るが、そこそこ力を秘めている様子だ。

 

二刀流か? と考えた直後、黄金の甲冑は引き抜いた剣を投げ、景太郎の手前の床に突き立てる。

何をしたいのか…考えるまでもない。景太郎に剣を使えと云うことだ。

 

 

「本気で闘え…と言うことか」

『………』

 

 

黄金の甲冑は戦いの中で察したのだろう。景太郎がもっとも得意とする武器が”剣”であることを。

そうでないと、散乱している多種多様な武器の中、真っ直ぐに剣を選ぶはずがない。

近くには、この剣よりももっと力を秘めた槍が転がっていたのに、それには見向きもしなかったのだ。

 

 

「わかった。だが……」

 

 

突き立った剣を引き抜き、天井高く放り投げる景太郎!

そして胸のボールペンを取り、手の内で回転させ―――――

 

 

「自前がある」

 

 

一瞬で”剣”へと転じたソレで、落ちてきた剣を木っ端微塵に打ち砕く!!

 

 

それこそ、景太郎の秘蔵であり相棒の『心操器』。

設定されたあるじの精神と同期し、姿、材質、重量すらも変幻自在に変わる魔導具。

白井や景太郎が『教授プロフェッサー』と呼ぶ人物から授けられた、世界で五つと無い代物。

 

使い手の精神が強ければ強いほど力を発揮し、威力を高める。景太郎にとって最高の武具だ。

惜しむらくは、事情があって炎術との組み合わせができないのだが…それでも、最高には違いなかった。

 

 

「………来い」

『………ッ!』

 

 

景太郎の誘う声に黄金の甲冑が猛然と斬撃を繰り出す!!

 

景太郎の持つ飾り気の全く無い無骨な剣―――――

空を舞う木の葉の如く斬撃を捌き、流水の如く緩やかに閃き、隙間を縫うように斬り込む。

 

黄金の甲冑が持つ、華美な装飾をされた剣―――――

不動の大地の如く重々しく、同時に疾風の如く速く、烈火の如く猛然と斬り込む!!

 

ある意味対極にある剣が、対極の剣技にて激しく打ち合わされる!

 

 

 

「速えぇ…なんて速えぇんだ……」

 

 

トムが自分の剣を握りしめながら唸るように呟く。

自らも剣を使うので解る。目の前の闘いが、自分の力量を圧倒的に上回っていることに……

それはグリニデも同じだ。自分が剣を一振りする間に、こいつらは数回剣を振るっている。

自分の技術は大型の化け物モンスター用の剛剣術だと理解してはいるが…やはり悔しいものは悔しい。

 

―――――その時!

 

 

『貴公の剣、見切った―――――』

 

 

黄金の甲冑の中からそう声が聞こえると同時に、電光石火の刺突が繰り出される!

言葉どおり景太郎の剣を見切ったのか、剣の防御を貫き、切っ先が眉間に向かって真っ直ぐに伸びる!!

 

 

―――――やられた!!

 

 

その場の誰もがそう直感した直後!

景太郎の身体が前触れもなくかき消え、十メートルほど後方に現れた!

 

 

 

 

「………喋れたのか」

『無駄口は好まん…』

 

 

場違いな景太郎の問いに、これまた場違いな返事を返す黄金の甲冑。

どちらも平坦な声で、死にかけた、相手を殺そうとした者の言葉とは思えないほどだ。

 

 

あの一瞬―――――黄金の甲冑の刺突が景太郎の眉間を貫いたと思われた瞬間。

景太郎は咄嗟に『瞬動術』を使い、後方に下がったのだ。

 

『瞬動術』とは足に氣や魔力を込め、大地の上を一瞬で移動する術なのだが…

刹那の瞬間…準備無しの状態から攻撃が当たる一瞬に使って避けるなど、達人でもできる者はそうそういない。

さすがはかの『神鳴流』において『鬼才』と謳われた景太郎か…

 

 

『もう一度言う…貴公の剣は見切った。勝ち目はない。潔い死か逃走を選べ』

「断る。それに時間が限られているからな…もう終わらせる―――――」

 

 

景太郎は剣を正眼に構え、グッと重心を下げた直後、黄金の甲冑に向かって斬りかかる!

 

 

『三度目だ…貴公の剣は見切った。悪あがきせず退け。腕を磨き次に備えよ。貴公なら…希望がある』

 

 

斬撃を受け止め、鍔迫り合いに持ち込みながら進言する黄金の甲冑。

それは忠告ではなく『頼み』の様にすら聞こえる言葉だ。だが…景太郎の返事は変わらない。

 

 

「苦痛の滅びか、安らかな解放か…好きな方を選べ」

『―――――ッ! この愚か者が!!』

 

 

黄金の甲冑は怒声と共に景太郎を弾き飛ばすと、剣を上段に振りかぶる!

そして景太郎に向かって跳びかか―――――る直前!!

 

 

ガシャン!!

 

 

虚空に銀色の閃光が閃き、黄金の甲冑の左腕が床に落ちた!

 

 

『―――――ッ!』

「もう一度訊く…苦痛の滅びか、安らかな解放か…選べ」

 

 

黄金の甲冑の眼前、低い姿勢で剣を振り上げている景太郎が静かに問う。

体勢から間合いをつめ、左腕を付け根から斬り上げて切断した…と言うことなのだろう。

だが、この場の誰もが見えなかった。いつの間に移動したのか…

そして、どうやって着地したままの恰好で…床を踏みしめることなく移動したのかさえも。

 

 

『―――――!!』

 

 

黄金の甲冑はかまわず片手で剣を振り下ろすが、再び振るわれた景太郎の剣に弾かれる!

そして景太郎の剣は素早くひるがえり、黄金の甲冑…その喉元に突きつけられた。

 

 

『き、貴公の剣は……』

「一つ…勘違いしているようだから訂正しておく。俺の剣は”剛”の剣…敵を全て斬る『滅殺』の剣だ」

『そうか…見切られたのは私の方だったのか』

 

 

黄金の甲冑の残った右手が力を失い垂れ下がる…

先程までの景太郎の受けの剣技…それは自分の剣を見切る為のものだと理解したのだ。

それが解らず、自分は勝手に見切ったと思いこみ、その実は見切られていた方だったのだ…と。

 

 

「最後だ…苦痛の滅びか、安らかな死か、好きな方を選べ」

『それは無論……苦痛の滅びだ』

 

 

黄金の甲冑は踵を返すと十メートルほど下がった。

そして、剣を残った右手で強く握りしめ…大上段に構えた!

 

 

『肉体が滅び、魂までも堕とされようと、誇りまでは失わぬ…我は『騎士』なり!』

「…いいだろう。その望み、叶えてやる」

 

 

景太郎は前傾姿勢となり、両手で構えた剣を右の腰だめに…更に捻って剣を腰の後ろで水平に構える。

その型から推測される太刀筋は『右薙』。

太刀筋さえ解れば対処もできると思えるが…刃のような鋭い闘気がその考えを容易に打ち砕く。

 

 

「………」

『………』

 

 

鋭い闘気をぶつけ合いながら睨みあう景太郎と黄金の甲冑…否、黄金の騎士。

二人とも身じろぎ一つもせず、ただジッと相手を睨んでいる。

 

いや、それは正確ではない。景太郎が、そして黄金の騎士は微かに切っ先を動かしている。

相手が動かせば自分も…ほんの小さな動きで相手の攻撃を読み、最善の対策をしているのだ。

 

無論、両者共に隙など無く、それが逆にお互いの動きを束縛し、拮抗した状態を作り上げているのだ。

 

 

 

「いつまで睨みあってるつもりなんだい…ちんたらしてる時間なんて無いのに…」

「まだ一分も経ってねぇ。それと漢の勝負に口を出すってのは野暮だ。黙って見てな」

 

 

微かに苛立つエルザにグリニデがそう言うと、懐から一枚の銀貨コインを取り出した。

そして指で弾いた銀貨コインは小さな彷彿線を描き…小さな音をたてて床に落ちた。

 

 

―――――次の瞬間!!

 

 

十メートルもの間合いを一瞬でつめた景太郎と、黄金の騎士の剣が激しく打ち合わされる!!

 

だが拮抗したのは一瞬―――――

黄金の騎士の剣は呆気なく弾き飛ばされ、景太郎の剣が右腕と胴体を斬った!

 

 

 

『見……事………』

 

 

床に転がった甲冑の上半身から声が聞こえる…

中身はなく、取り憑いた存在がどうやって話しているのかは解らないが…それは今ではどうでもいいことだ。

 

 

『今の…技は………』

 

「『神薙かんなぎ』―――――神すらも薙ぎ払う。剛の太刀だ。

それよりも消えるくたばる前に教えろ。なぜ手を抜いた。いくらなんでも手応えが無さすぎた」

 

『気のせいだ…片手だからそう感じたのだろう』

 

「そうか……そう言うことにしておく」

 

『悔いは無い…奴に殺され、この甲冑に魂を封じ込まれて数百年……

魔術により意志を束縛され、命令されて戦い続けてきた…ずっとこの時を待って……やっと…死ねる』

 

「介錯…トドメはいるか」

『無用…それよりも頼みがある……私の剣を……』

「これがどうした」

 

 

床に転がっていた黄金の騎士の剣を拾う景太郎。

『心操器』で作り上げた剣と激しく打ち合ったというのに、刃こぼれ一つ起こしていない。

 

 

『あつかましいとは解っている…だが……せめて一太刀…その剣で奴を……姫の仇を…』

「その為に……」

 

 

力を抜いて斬られたのか…その言葉は、口から出ることなく飲み込まれた。

それが、嘘までついて語ろうとしなかった、黄金の騎士に対する礼儀であり、せめてもの手向けだ。

 

 

「……解った。この剣と共に思いは確かに受け取った。だから安心して眠れ」

『感謝…する………東洋の…若き剣士よ』

 

 

それが…名も知らない騎士の最後の言葉だった。

力尽き果てた甲冑は精細を失い、見る見るうちに朽ち、一分も経たぬ内に少量の塵と化した。

そして、その塵も一陣の風に吹かれて散っていった……

唯一残ったのは、景太郎が譲り受けた剣と、その鞘だけだ。

 

景太郎は無言のまま鞘を拾い剣を納めると、ポケットから紐を取り出し、鞘に取り付けて剣を背負った。

剣が規格外に長いので、腰に差すと先が床に当たるので、やむなく背負う形にしたのだ。

 

 

「ご苦労だったな。坊主」

「いえ……」

 

 

近寄ったグリニデの言葉に短くそう応える景太郎。

実を言えばそんなに苦労したわけではないが…少々疲れたのは否めない。

体ではなく心が…冷徹に徹しても、斬った相手が相手だけに……

 

 

「時間をかけすぎましたね…早く行きましょう」

 

 

そう言うと、景太郎はいつの間にか開かれていた扉に向かって足を向けた。

 

グリニデ達は…そんな景太郎に無理に言葉をかけようとせず、

今までどおり…半ば巫山戯あった感じで次の部屋に向かった。

 

 

「さて…お次はどんなくそったれな歓迎が待っているのやら」

「いい加減御大に出てきて欲しいところだね…」

「ケケケ…どっかの術者様と同じく、俺達の予想外の強さに怯えてるんじゃねぇの?」

 

「おいそこの凡人、それは誰のことだ」

 

「さてね、胸に手を当てて聞いてみな」

「ま、まぁまぁこんな所で喧嘩せずに早く行きましょう。ね?」

 

 

 

 

訂正………この連中に気遣いという言葉は無いのかもしれない。

もっとも、これがこの連中の強さであることは、疑い用はないだろう。

 

 

 

 

そして…景太郎達は次の舞台ステージへと上がった。

 

 

 

 


 

 

 

「ううっ、騎士さんかわいそうです……」

 

 

黄金の騎士の最後を聞き、涙ぐむしのぶ…

なる達もどことなく悲しそうな顔をしており、キツネはなんとも言えない表情で酒を飲んでいた。

 

 

「そんなに悲しむな、しのぶ。確かに可哀想かもしれないが、あのままの方がもっと辛かったはずだ。

魂が消滅したとしても…解放されたことを喜ぶべきなんだ」

 

「はい……」

 

 

優しい表情で諭す素子に、しのぶは涙を拭き、頷きながら返事をした。

その様子になる達も微かに笑みを見せた…

 

そんな中…景太郎がどこかばつの悪い顔をして口をはさむ。

 

 

「あ〜…悲しんでいるところ悪いが……」

「なんだ、神凪」

「その騎士な…ちゃんと成仏したんだがな……」

 

「「「「「はぁ!?」」」」」

 

「だからな、騎士の魂は甲冑から解き放たれてちゃんと成仏したぞ。

この場合は…天国に行ったって言うのか?」

 

「そんな事どうでもいいわ、成仏したってのはどう言うことよ!?」

 

 

詰め寄るように詰問するなる。

半ば悲壮的なシーンを根底から覆され、何やらご立腹のようだ。

 

 

「早い話がだな、甲冑と同時に魂を束縛していた魔術とかも斬ったんだよ。

ついでに、堕ちた魂も浄化してな。だから解き放たれた魂は成仏したって事だ。

ついでに言えば、俺が倒した甲冑は全部そうだからな」

 

「そう…なの?」

「そうだ。青山、お前なら理解できるな」

「あ、ああ。斬魔剣…浄化の力を持つ”神氣”にて魔を斬る奥義だな。しかし……」

 

 

更に言葉を繋げようとしたが、押し黙ってしまう素子…

景太郎の『凶断まがだち』と『斬魔剣』は根本が一緒…名が違うだけみたいな技らしい。

 

そうなると…景太郎がやったこと…束縛していた魔術モノだけを斬り、魂を汚していた魔の部分を浄化した。

そんな行為ができるなど、ただの斬魔剣ではない…明らかにその上位の奥義、『斬魔剣・ニノ太刀』だ。

 

斬る存在を限定する奥義…精霊魔術で云えば、対象を限定する高位技術に当たる。

それを使えば、先程景太郎が言ったことも可能だろう。

 

だが…ただ単に『ニノ太刀』を会得するだけでも相当な修練、努力が必要なはずなのに、

魂を汚していた魔の部分を浄化するなど……どれ程の練氣、技術が必要なのか、今の自分には想像もつかない。

それを自分と同じ年頃に行っていたなど…本音を言えば、信じられることではなかった。

しかし…それは真実だ。信じられずとも……そう、素子の心は理解していた。

 

 

「それよりも〜ケ〜タロ〜! なんか面白おもろいもんもっとるんやな〜、うち見てみたい!」

「面白い?」

「心操器! 色んな形に変化するなんて、むっちゃ面白おもろそうやん。見せて〜や」

 

 

腕を掴んでせがむスゥ。

しのぶは迷惑になると思い慌ててスゥを放そうとするが、景太郎自身が苦笑しながらそれを止めた。

 

 

「ごめんね、スゥちゃん。あれは一年ぐらい前に大物の敵と闘った際に無くなったんだ」

「え〜、そんなぁ」

「ごめんね」

「もう手にはいらへんの?」

「ちょっと無理なんだ。あれを貰ったのも殆ど偶然だったし…二度と手に入らないんだ」

「そうか〜…残念やなぁ」

 

 

景太郎自身も残念で仕方がない。

あの時は必要だったから使わざるおえなかったが…できれば、手元に残しておきたかった一品だった。

ただ金を積めば手に入ると云う代物ではないのだ。本当に…二度と手に入れることはない。

少なくとも君が生きている間には原材料は手に入らんな…制作者である教授プロフェッサーもそう断言していた。

 

 

「それでは、あの剣はどうなのだ? あの剣は今でも持っているのか?」

 

 

少々興奮した状態の素子が景太郎に聞いてくる。

刀剣蒐集家コレクターである為、気になって仕方がないのだろう。

実物は見ずとも、景太郎の話を聞いているだけで凄き剣だということは解る。

なにせ、黄金の騎士が持っていると言うことは少なくとも数百年前の代物…しかも今だ現役。

素子でなくとも、霊剣などの類に興味のある人物なら気になるところだろう。

 

 

「いや、あの剣はもう無い」

「無いだと!! どうしてだ、かなり良い剣だったのだろう、まさか捨てたのか?!」

「それこそ『まさか』だ。それは話を最後まで聞いていれば解るから黙って続きを聞け」

「わ、解った……それにしても勿体ない…高い霊格の剣など……

 

 

 

未練がましくブツブツと呟いている素子を無視し、景太郎は話の続きを話し始めた―――――

 

 

 

 

―――――第四幕に続く―――――

 

 

 

 

 

 

《あとがき》

 

どうも、ケインです。やっとの事で三幕です。

この時点で、四つの試練の内、半分までクリアです。

 

景太郎は炎術無しですが…本文中にあるとおり、予測して準備はしていました。

だから、白井に無理を言ってこちらに来させたんです。

それが苦無とか、符とかです。他にも色々とあるんですが…出番があるかどうかは不明です。

この二つが主ですし…それに、万能武具である心操器もありますしね。

 

さて…四幕ですが、まるまる使って三つ目の試練をクリアします。

その途中で色々とあるのですが…それは見てのお楽しみと言うことで。

ちょっとではありますが、景太郎の氣功術、剣術がでる…かもしれません。

 

 

それでは、次回もよろしければ読んでやってください。ケインでした……

 

 

 

 

 

 

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